松山ケンイチと農業
松ケンこと俳優の松山ケンイチさんは、以前インタビューで農業に興味がある、と語っていました。
その理由として、「自分が豊かになること」だと松山ケンイチさんは言います。
自分が豊かでないと子供に何かを伝えることもできないから、豊かになるためにも、自然のなかで生きていきたい。でも、どうしても東京では自然といっしょに生活することは難しいので、今は農業を勉強中です、と。
もともと青森の出身で自然のなかで育ってきた松山さんは、祖父が農業を行い、その収穫物を食べていました。
そして、そのことがとても自然だと感じられたことも影響し、一度動物や原始人のような暮らしをしてみたい、という風に語っていました。
お金に頼らずに土から何かを頂く感覚。動物や原始人と同じことを一回やってみたいとずっと思っています。価値観が変わるでしょうし、本当に大事なものが見えてくると思うんですよ。その中で捨てられるものはどんどん捨てたいと思う。
豊かになる、ということは、多くのものを集めることよりも、「捨てられるものはどんどん捨て」、ほんとうに大切なものだけで生きる。
自分のなかに眠っている豊かさに目を向ける、ということなのかもしれません。
そして、様々なことが便利になっていく世の中で、「手間暇をかける」ということをしっかり体感として知りたい、と語る松山ケンイチさんが今興味を抱いているのが、自然栽培農業です。
自然栽培とは、無農薬無肥料で行う農法で、哲学や方法の差はありますが、「自然農法」「自然農」などとも言われています。
映画雑誌『ピクトアップ』では、松山さんは、自然栽培の野菜を販売するナチュラルハーモニーの河名代表と対談も行なっています。
自然と調和した栽培方法である自然栽培に興味を持った松山さんがコンタクトをとったことで、二人の交流は始まったそうです。
松山ケンイチさんが河名さんの存在を知ったのは、医師の三好基晴氏との共著である『発酵遺産 天然菌の発酵食』を読んでいたことがきっかけだったとのこと。
世の中が情報から食、交通まで人工的なものに囲まれ、「動く歩道に乗せられてどこかに運ばれているような不安」を感じると語る松山さん。自分で舟を漕がないとへんなところに行ってしまう気がする、と言います。
そこで松山さんは、2019年から少しずつ自然栽培に取り組んでみることにしたそうで、その作物は「りんご」。
りんごで自然栽培と言うと、同じ青森で自然栽培りんごをつくることに成功し、NHKの『プロフェッショナル』でも放送された、木村秋則さんの『奇跡のリンゴ』を思い出すひともいるかもしれません。
自然栽培のなかでも、特に難しいのがリンゴで、周りからも「無理だ」と言われているそうです。
ヨーロッパでは自然に自生しているリンゴもあり、味は美味しいものの酸味が強く、日本人の好みに合わせて改良された酸味のない品種のリンゴを自然栽培で育てるのはとても難しいことのようです。
それでも、チャレンジしてみたい様子の松山さん。

先述のインタビューでも、農業と俳優という自然と人工のバランスがちょうどいい、と語っていたように、農業を行うことが、俳優、役者としても豊かな実りをもたらしてくれるのではないでしょうか。
以下、対談のなかで素敵だなと思った松山ケンイチさんの言葉を紹介したいと思います。
僕がやってる仕事ってセットでの撮影になるともう一切、自然がない。人工的なもののなかでは表現もやっぱり人工的になってしまう気がする。「土を触って実感することでしか得られないものがある」と思ったし、そこに幸せになるヒントがあるんじゃないか、と考えたんです。
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知っていてあえて選ぶなら、それは趣向になりますよね。チョイスの楽しさが広がる。
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ばくぜんと「食わされている」っていう状態が一番つまらない。
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究極を言うと、2キロ圏内だけで生活はできるし、そこで幸せを得られるかもしれないな、とわいは思っていたんです。それこそ効率を求めたら、情報は遮断した方が楽ですし。でも生きるために人や社会と関わっていかなければいけない。
河名さんの言う“メッセージ”みたいなものを受け取っていかなければ、と感じました。